結論
- 会社選びの前に決めるべきは「どこまでを任せるか」です。範囲が決まっていないと、どの会社の見積もりも比較できません
- 提案書の見栄えではなく、運用が始まってから誰が何をするかで判断します。ここが曖昧な契約は、3ヶ月目に止まります
- 金額の高い・安いは、同じ条件で見積もりを取るまで判断できません。本数も体制も違う見積もりを並べても意味がないからです
以下、発注前に確認する項目と、条件を揃えて比較する手順をまとめます。
1. 最初に決めるのは「代行の範囲」
SNS運用代行という言葉は、実際には範囲の違う3つの契約を指しています。ここを決めないまま問い合わせると、返ってくる提案の前提がばらばらになります。
① 丸投げ型(企画から投稿まで代行)
企画・撮影・編集・投稿・分析まで外部が行います。自社の工数はほとんどかかりません。その代わり、運用のノウハウは社内に残りません。契約が切れた時点で更新が止まります。
② 伴走型(設計と分析は外部、実行は自社)
戦略設計・コンテンツの型づくり・数値の分析を外部が担い、撮影や投稿は自社が行います。自社の担当者に一定の工数が必要ですが、運用の型が社内に残ります。
③ 制作のみ(動画・画像の納品)
投稿する素材だけを作ってもらう形です。何を投稿するかの判断は自社に残ります。すでに運用方針が固まっている場合に向いています。
この3つは金額の桁が違います。丸投げ型の見積もりと制作のみの見積もりを並べて「A社は高い」と判断してしまうのが、比較で最初につまずくところです。
なお、②の伴走型は自社の担当者が学ぶ設計になるため、教育訓練に対する助成金の対象になり得ます。この点は別の記事にまとめています。
2. 発注前に確認する10項目
範囲を決めたうえで、候補の会社に次の10項目を聞きます。答えが返ってこない項目があること自体が判断材料になります。
| # | 確認する項目 | 見るべきポイント |
|---|---|---|
| 1 | 月あたりの投稿本数と、その内訳 | 「本数」だけでなく、撮影あり/なし、静止画/動画の内訳まで。同じ10本でも工数が数倍違う |
| 2 | 撮影の有無と、撮影日の回数 | 撮影が含まれるか、月何回の稼働か。ここが見積もり差の最大要因 |
| 3 | 実際に担当する人の体制 | 営業担当と運用担当が別か。運用者は何アカウント兼任か |
| 4 | 修正回数の上限 | 「何回まで無料か」。上限なしと書かれている場合は、実際の運用でどう捌いているかを聞く |
| 5 | 追う指標と、その報告頻度 | フォロワー数だけを見ているか、問い合わせ・来店・採用応募まで見ているか |
| 6 | 数値目標に対する扱い | 未達のときに何をするか。施策の変更手順が決まっているか |
| 7 | アカウントの権限 | 自社のアカウントに代行会社を招待する形か、先方が作ったアカウントを借りる形か。後者は解約時に資産が残らない |
| 8 | 素材の権利 | 撮影データ・編集済み動画を、契約終了後に自社で使えるか |
| 9 | 最低契約期間と解約条件 | 半年縛りか、月次か。途中解約の通知期限 |
| 10 | 契約終了後の引き継ぎ | 運用マニュアル・投稿の設計思想が納品物に含まれるか |
特に落とし穴になりやすいのは7番と8番です
アカウントを代行会社の管理下で作られていると、契約終了と同時にフォロワーごと使えなくなることがあります。アカウントは自社で作り、代行会社を管理者として招待する形にしておけば、この事故は起きません。契約前に確認しておく価値のある一点です。
3. 他社から乗り換える方が、最も多く挙げる理由
当社に乗り換えのご相談をいただくとき、最も多い理由は「投稿内容が自社の業種に合っていない」です。表面上は「報告は毎月届くのに成果につながらない」という形で出てきますが、たどるとここに行き着きます。
一般的な集客の型をそのまま当てはめると、その業界の顧客が実際に気にしている点が抜け落ちます。飲食店なら混雑状況、クリニックなら誰が診るのか、採用なら一緒に働く人。業界ごとに決め手が違うためです。
そこで前章の10項目のうち、3番(実際に担当する人の体制)で「自社と同じ業種の経験があるか」まで踏み込んで聞いてください。会社としての実績ではなく、担当者個人の経験を聞くのが要点です。
3. 費用の見方:金額ではなく内訳を見る
SNS運用代行の見積もりは、次の要素の積み上げでできています。
| 費用の中身 | 何で変動するか |
|---|---|
| 戦略設計・初期の型づくり | 初月に集中。アカウント数と分析の深さ |
| 撮影 | 撮影日数・カメラマンの人数・出張の有無 |
| 編集 | 本数・尺・字幕やアニメーションの作り込み |
| 投稿と日々の運用 | 投稿頻度・コメント返信の有無 |
| 分析とレポート | レポートの頻度・打ち合わせの回数 |
| 広告運用(含む場合) | 手数料の算定方法(広告費の何%か、固定か) |
「月◯万円」という総額だけでは、この内訳が見えません。同じ金額でも、撮影が入っているかどうかで実質は大きく変わります。見積もりを受け取ったら、この6項目にどう割り振られているかを聞いてください。答えられない場合、その会社の中でも原価が管理されていない可能性があります。
一方で、相場の金額そのものをネット上の記事から拾うのは勧めません。会社ごとに範囲の定義が違うため、記事に載っている「相場」が自社の条件と同じ前提で書かれている保証がないからです。相場は、自社の条件で3社に見積もりを取れば分かります。そのための手順が次です。
4. 条件を揃えて見積もりを取る手順
比較できる見積もりを集めるには、こちらから条件を固定して渡します。次の6行を書いて同じ文面で送るだけで、返ってくる見積もりが並べられる形になります。
1. 対象媒体:(例)Instagram と TikTok の2媒体 2. 目的:(例)店舗への来店予約の増加。フォロワー数は指標としない 3. 期間:6ヶ月 4. 自社でできること:(例)撮影場所の提供と、スタッフの出演は可能。編集は不可 5. 希望する投稿本数:月8本(うち動画4本) 6. 見積もりの内訳:戦略設計/撮影/編集/投稿運用/レポート に分けて記載を希望
6番を入れておくのが要点です。総額だけの見積もりが返ってきた場合、その会社は内訳を出さない方針だと分かります。
自社の条件でどこまで任せるべきか迷う場合は、初回のオンラインヒアリング(無料)で整理できます。→ お問い合わせ
5. よくある失敗
① 提案の見栄えで決めてしまう
提案書を作るのは営業担当で、運用するのは別の担当者ということがあります。提案の場に運用担当が同席するかを聞いておくと、体制の実態が見えます。
② フォロワー数を目標にしてしまう
フォロワーは増やそうとすれば増やせる指標です。ただし増えたフォロワーが顧客層と違えば、売上にも採用にもつながりません。問い合わせ数・来店数・応募数のどれを見るかを、契約前に決めておきます。
③ 3ヶ月で判断してしまう
アカウントの設計を変えると、数値が動き始めるまでに時間がかかります。かといって成果が出ないまま続けるのも違います。3ヶ月時点で何を見て継続を判断するかを、あらかじめ決めておく方法があります。指標と判定基準を先に合意しておけば、感覚での打ち切りにならずに済みます。
6. 自社で運用する選択肢も同時に検討する
外注が常に正しいわけではありません。次の条件がそろっている場合、社内で運用したほうが速く回ります。
- 撮影できる人・被写体になれる人が社内にいる
- 週に数時間、継続して確保できる担当者がいる
- 何を発信するかの方針が、すでに社内で決まっている
この場合に外部が担うべきなのは、投稿の代行ではなく設計と教育です。運用の型を作り、担当者が自走できるところまで引き上げる形になります。当社ではこの形を法人向けの研修としても提供しています。
よくある質問
相場より安い会社は避けるべきですか
金額だけでは判断できません。範囲が違えば金額も変わります。内訳を6項目に分けて出してもらい、同じ条件で比べてください。
契約期間はどのくらいが妥当ですか
最低6ヶ月は見ておくのが現実的です。設計を変えてから数字が動くまでに時間がかかるためです。ただし3ヶ月時点で何を見て継続を判断するかは、契約前に決めておいてください。
自社の業種の実績がない会社はやめたほうがいいですか
必ずしもそうではありませんが、乗り換え相談で最も多い理由が「業種に合っていない投稿」である以上、確認はしてください。会社の実績ではなく担当者個人の経験を聞くのが要点です。
費用を抑える方法はありますか
自社の担当者が学ぶ設計にする場合、助成金の対象になり得ます。→ SNS運用の外注に助成金は使えるか
まとめ
- 会社を探す前に、任せる範囲(丸投げ型/伴走型/制作のみ)を決める
- 10項目を聞く。特にアカウントの権限と素材の権利は契約前に確定させる
- 見積もりは総額ではなく内訳で見る。相場は同条件で3社に取れば分かる
- フォロワー数ではなく、問い合わせ・来店・応募のどれを見るかを先に決める
当社は累計500社のSNS運用を支援してきました。初回のヒアリングはオンラインで実施し、費用はいただいていません。「そもそも外注すべきかどうか」の段階でも構いません。
